トリノも見所がいっぱい。まずは自動車博物館へ。
それにしてもトリノは寒かったです。さすが冬季オリンピックが開かれるだけのことはあります。
国立トリノ自動車博物館(Museo Nazionale dell’Automobile di Torino)
さすがフィアットのおひざ元!
地下鉄でリンゴットまで行きます。リンゴットはかつてフィアットの本社と工場があったところです。
自動車製造及び関連産業はトリノの主要産業ですし、自動車博物館はまさにあるべき場所にあるといえるでしょう。
この博物館の歴史は1932年にさかのぼるようですが、2011年に大規模リニューアルが行われ2014年に完成したようです。建物・展示ともにデザインがとても素晴らしく、また美しく秀逸でした。
展示は3フロアに分かれていて、3階から1階へと順に見学しました。3階のテーマは「車と1900年代」、2階は「人と車」、1階は「車とデザイン」です。
200台も収蔵・展示されているとのことですが、見落としてなければ日本車の展示はありませんでした。アメリカ車、ドイツ車、イギリス車などは展示されているのですが。日本車には画期となったものがないということでしょうか。展示されていなくても何か言及があってもよさそうな気がするのですが。それとランボルギーニもなかったような。国立ならあっても良いと思うのですが、フィアットグループのフェラーリへの配慮・忖度でしょうか?
見せ方、展示デザインはさすが。照明の使い方なども実に巧みです。自動車という展示映えするものを展示しているということを考慮しても唸らされました。
興味深い展示が2つありました。一つは航空写真(衛星写真)でトリノと自動車産業のかかわりを紹介している展示。もう一つは自動車デザイナー個人を紹介している展示。こちらは日本の企業内デザイナーも紹介していました。
自動車にまつわる文化、アートにも色々な角度からスポットをあてて紹介しているのもとても良かったです。
自動車好きでなくても十分楽しむことができる博物館だと思いました。
それにしても、トヨタやホンダがすごく良い博物館を持っていますが、日本にはなぜ国立の自動車博物館がないのでしょう?
エジプト博物館(Museo Egizio)
エジプト国外では最大級の収蔵品
URL: http://www.museoegizio.it/
それにしても膨大な資料の数です。どうしてもつきまとうのが、なぜトリノにこんなすごいエジプトコレクションがあるんだ?ということ。説明されているところもあったのですが、いつからコレクションが始まったのかなどは書いてありましたが、「どうして」「なぜ」の答えにはなっていないと思いました。読解力というか英語力の不足でわからないだけのような気もしますが…。
【追記】
もう一度なぜトリノに充実したエジプトの博物館があるのか理由を調べてみました。
トリノは、イタリアの統一前、サルダーニャ王国の首都でしたが、第2代国王カルロ・エマヌエーレ3世(在位:1730-1733年)や第6代国王カルロ・フェリーチェ(在位:1821-1831年)が古代エジプトの資料を収集したからというのが理由のようです。美術品を集める感覚で収集したのかもしれません。
姉妹サイトで、もう少し詳しくエジプト博物館のことを紹介しています。
エジプトの遺物がはじめてトリノに持ち込まれたのは1630年。その後、国王がエジプトに資料収集のためにエジプトに学者を派遣したり購入したりすることでコレクションが形成され、1824年に博物館(Regio Museo di Antichità ed Egizio)が公式に開館したようです。
ちなみに、シャンポリオンもヒエログラフの研究のため訪れたりしたようですので、当時、トリノはエジプト学の拠点であったのかもしれませんね。
トリノ王宮博物館(Musei Reali Torino)
豪華絢爛な王宮
URL: https://www.museireali.beniculturali.it/
「サヴォイア王家の王宮群」の構成施設として世界遺産にも登録されているトリノ王宮。
トリノ王宮博物館(Musei Reali Torino)は、王宮(Palazzo Reale)、武器庫(Armeria Reale)、図書館(Biblioteca Reale)、サバウダ美術館(Galleria Sabauda)、考古学博物館(Museo di Antichita)、礼拝堂、庭園、企画展示室(Salle Chiablese)からなるミュージアムの複合体です。これを理解しておかないとちょっと混乱するかもしれません。基本的にチケットは共通ですが、企画展は別途有料で、図書館と庭園は無料で利用できるようです。
王宮は見ごたえがありました。正直なところ、こんなに豪華絢爛、きらびやかな王宮がトリノにあるなんて思ってもみませんでした。サヴォイア王家の繁栄ぶりがうかがわれます。
サン・ジョヴァンニ・バッティスタ大聖堂(Basilica Cattedrale di San Giovanni Battista)
聖骸布が保管されている教会
URL: http://www.duomoditorino.it/
トリノのドゥオーモとも呼ばれるサン・ジョヴァンニ・バッティスタ大聖堂(聖ヨハネ大聖堂)。ここにキリストの遺体を包んだという聖骸布が保管されています。
実は最初、下調べ不足もあってそのことが頭になくさっと中を見て終わりにしてしまいました。翌日、出直して見直しました。
実際のところ、見落としてしまうぐらいの雰囲気で、大げさではないかたちで保管されています。また、保存を考えると当たり前ですが、聖骸布そのものが見られるわけでもないです。見学者の数は多くなかったです。
タワーに先に上ったのですが、どちらかというとこの日はその印象が強かったです。なんといってもタワーの上まで階段。かなりきつかったです。修復中だったので足場が展望の妨げになっていたのは残念でした。
東洋美術館(Museo d’Arte Orientale)
思いのほか(?)充実しているコレクション
この美術館は2008年にオープンしたようです。比較的最近のことですが、なぜトリノにこのような美術館が作られたのでしょうか。ちょっとわからなかったです。
さほど期待していたわけではないのですが、日本関係の展示は意外に充実していました。ただ、照度のことなど展示方法はこれでいいのかなと疑問に思ったところがなくはないです。
日本以外の常設展示も見ました。細かく見ていければ発見もあったかもしれませんが、流し見だったこともあり、まぁこんな感じかなといったところが偽らざる感想です。
ちょうど「忍者と侍」という企画展をやっていました。2017年12月8日~2018年4月2日が会期でした。それにしても、この企画展、なんともなタイトルという気がしなくはないです。
なぞな部分が少なくない企画展でしたが、少しでも日本のことを知っていただけるのは良いことだと思いますし、日本ファンが増えるといいなと思いました。
国立映画博物館(Museo nazionale del Cinema)
映画の楽しさ、素晴らしさを教えてくれる博物館
URL: http://www.museocinema.it/
トリノはマカロニ・ウエスタンが数多く制作されるなどイタリアの映画産業の中心地だったようです。そのためか、国立の映画博物館がトリノにあります。2000年にオープン(前身は1958年から1983年まで別の場所にあったようです)。
特徴的な建物
余談的なことが先になりますが、ここは建物がとても面白いです。中庭状というか吹き抜けになっていてその中央にシースルーエレベータがあり展望タワーに上がれます。これ自体がけっこうアトラクションになっています。展示は1・2階と周辺部の回廊に配置されています。回廊は複数フロアあります。グッゲンハイム美術館のように見ていくと例えるのがいいかもしれません。
この建物は、1889年に完成したモーレ・アントネッリアーナという名前で、もともとはシナゴーグとして使われるはずだったとか。また、高さ167.5mはエッフェル塔ができるまではヨーロッパで一番高い建物だったそうです。
映画・映像を多面的に紹介する展示
展示は映画・映像に関して多面的に紹介しています。だまし絵・のぞきからくりなどの体験装置、動いて見える原理・仕組み、映画ができるまでの過程・職種・役割、スターや映像制作者のゆかりの品々、ポスターなど見ごたえたっぷりです。こんなに充実しているなんて思っていなかったです。映画の上映は近くのシアターで行っているようです。すごいなと思ったのは、展示されているのが、イタリアやトリノに限ったものではないことです。日本やハリウッドの映画製作者やスターなども紹介されています。また、赤いカーテンがありここから先は大人向きという展示もありました。これはセクシャルであったりグロテスクな映像にかかわる展示のためです。
考えさせられたこと
見ごたえもありとても面白く興味深かったですが、少し考えさせられました。やはり、国の取り組みとして映像文化をきちんと守り保護・育成していくことが重要だと思います。だからここも国立なんでしょう。もちろんイタリアの映画の中心地トリノという記念性ももちろんあるでしょう。しかしここの展示にはそうした部分は少なかったです。
対して日本はどうでしょう?日本には小津安二郎や黒澤明など国際的に評価される監督がいて素晴らしい作品を生み出しています。やっと2018年4月から近代美術館のフィルムセンターが独立して、国立映画アーカイブになりました。とても喜ばしいことは確かなのですが、映像作品を収集するのは当たり前のこととして、映像制作・映画産業に関係する「物」の収集保管は十分に行っているのでしょうか。そしてそれらをきちんとしたかたちで展示することがとても大切だと思います。まだ国として映像文化や映像産業を守り育てていくというコンセンサスがまだ十分ではないのかもしれません。今度、映画アーカイブに行って確かめたいと思います。
迫力あるエレベーター
塔に上りました。映画博物館は見ずにこの塔だけを上りくる観光客もいっぱいのようです。吹き抜けのところのエレベーター、迫力というかスリルがけっこうありました。こういうエレベーターは他所ではみたことがありません。確かにこれだけに来る観光客がいるのもわかります。陽が暮れてしまっていたのですが、夜景はきれいでした。昼間の方がもっと美しくいろいろ見えて面白いかもしれません。
映画の舞台になっている博物館
この博物館を舞台にした映画があるのを知りました。「トリノ、24時からの恋人たち」。主人公の一人はこの博物館の夜警だそうです。まだ見たことはないので、今度ぜひ見てみたいと思います。
街の風景
今日の歩数:24,281歩 世界一周はあと43日