世界のミュージアムの入館料事情

世界のミュージアムの入館料事情を探る

国公立か私立かや、歴史系博物館、美術館、科学館などの館種、館の規模などによって入館料はずいぶん違います。また、国の施策や物価などの影響も受けます。

世界を旅して感じた各国のミュージアムの入館料事情について紹介したいと思います。

全体的な傾向

一般的な割引のパターン

世界共通ともいえると思いますが、「シニア割引」「団体割引」「身障者割引」「オンライン事前購入割引」などの割引制度は多くのミュージアムが取り入れています。また、「学校団体の無料入館」「学生割引」も広く普及している制度です。また、数が多いとは言えないと思いますが、「教員割引」「博物館関係者割引」「住民割引」を実施しているところもあります。

なお、オンラインでの事前購入については、割引ではなく、逆に手数料が必要なところもあります。

メンバーの無料入館制度

多くの館でメンバー制度(友の会など)を取り入れています。会費を支払いメンバーになると、無料入館などの特典があるほか、内覧会などの特別イベントへ参加できるなど様々な特典が用意されることが多いです。

共通観覧券・観覧パスポート券

日本でも、例えば、東京には「ぐるっとパス」があり、いろいろなミュージアムの常設展示などをお得に見ることができる仕組みがありますが、観光客が多い都市には同様の共通観覧券・観覧パスポート券が導入されているところが少なくありません。中には乗り物のキップとセットになっているようなものもあります。

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こうしたパスポート券は、金銭的にお得なだけではなくて、並ばずに入れたりなどのメリットもありますので、うまく使いこなすととても便利だと思います。

 

国別の入館料事情

当日購入の大人・個人の常設展示の入館料について、訪れた館を中心に国別にまとめてみました。企画展や大型映像シアターなどは基本的に含んでいません。

アメリカ

今回は行きませんでしたが、国立のスミソニアン系の博物館などは無料ですが、全般的には、日本より入館料が高いと感じました。

入館者数上位の入館料(常設展・大人・当日・個人)を見てみると、25ドル前後のところが多いようです。25ドルといえば1ドル=110円換算で2,750円になります。

無料の日・時間

無料入館ができる日があったり、特定曜日の特定の時間帯を無料にする制度を設けている館も多いです。

例えば、ニューヨーク近代美術館(MoMA)では、金曜の16時以降は無料です。これは、ユニクロがスポンサーになって実現しています。下記には、ニューヨークのミュージアムについて、無料入館できる日・時間などがまとめられていました。

https://www.nyc-arts.org/collections/35/free-museum-days-or-pay-what-you-wish

こうした特定の日・時間を無料にすることは、欧米では比較的普及しているといえると思います。

Pay-What-You-Wish/Pay-As-You-Wish制度

面白いのは、Pay-What-You-Wishチケット。入館者が入館料を自分で決めるという仕組み。善意に任せるといったところでしょうか。ホイットニー美術館などで導入されています。通常より安く入館することもできますし、逆に寄付をしたいということであれば高い入館料を支払うこともできます。上記のサイトでもこの仕組みを導入している博物館・美術館を紹介しています。

ちなみにメトロポリタン美術館もかつてこの方式を導入していたようですが、最近、やめてしまったようです。

軍人割引・無料(Military Discount)

とてもユニークだと思ったのは、軍人割引制度。軍人は入館無料になる制度を導入している館も少なくありません。例えば、イントレピッド海上航空宇宙博物館のような軍関係のミュージアムだけではなく、ニューヨーク近代美術館やシカゴ科学産業博物館なども導入しています。

対象は、現役の軍人本人だけではなくその家族も対象になることもありますし、退役軍人も含まれることもあります。また、消防士や警察官も対象になる場合があるようです。

他の国でも同様の制度を導入しているところもあります。

館名入館料入館者数
メトロポリタン美術館25ドル7,000,000人
アメリカ自然史博物館23ドル5,000,000人
ニューヨーク近代美術館25ドル2,750,000人
ヒューストン自然科学博物館(未訪問)25ドル2,295,000人
カリフォルニア・サイエンス・センター無料2,106,000人
デンバー自然科学博物館(未訪問)16.95ドル1,800,000人
フィールド・ミュージアム24ドル1,800,000人
シカゴ美術館25ドル1,610,000人
シカゴ科学技術博物館21.95ドル1,490,000人
J. ポール・ゲッティ・センター(未訪問)無料1,452,000人
ボストン科学博物館(未訪問)28ドル1,400,000人
カリフォルニア科学アカデミー35.95ドル1,300,000人

アイルランド

国公立のミュージアムは、常設展は無料のようです。

観光的なミュージアムは、概ね10~15ユーロ程度といったところ。1ユーロ=130円換算で1,300~1,950円です。観光的なミュージアムということを考えると、日本より少し高いぐらいの感覚です。ちなみに、大阪城天守閣は600円、網走監獄は1,080円です

館名入館料入館者数
アイルランド国立美術館無料75万人
アイルランド国立博物館:考古学館無料
アイルランド現代美術館無料584,000人
ダブリン城7ユーロ
エピック・アイルランド移民博物館14ユーロ
キルメイナム刑務所9ユーロ
リトル・ミュージアム・オブ・ダブリン10ユーロ51,500人
アイルランド蝋人形館15ユーロ
参考:ギネス・ストアハウス25ユーロ1,711,281人

イギリス

国立のミュージアムは無料

大英博物館をはじめ国立のミュージアムの常設展示は無料で、企画展は有料だと考えて良いでしょう。

かつて試行を含めて常設展を有料にしたこともあったようですが、現在は、無料に戻っています。ただ、エントランスホールに寄付金箱(ドネーション・ボックス)が置かれたり、館内マップ(フロアガイド)をもらうのに1ポンド程度の寄付が求められたりはしています。

なお、国立のミュージアムは、日本でいう独立行政法人的な組織で運営されていることが多いようです。

公立(公共機関運営)は有料?

ロンドン交通博物館は有料でしたので、もしかしたら公共機関が運営している場合は、有料のところもあるのかもしれません。

史跡・観光スポットは有料

ロンドン塔やチャーチル・ウォー・ルームなど博物館と言っても良いようなところもありますが、こうした史跡・観光スポット的なところは有料です。こうした有料のところは、シニア割引や団体割引など広く一般的に普及している割引制度は導入されています。

チャーチル・ウォー・ルームはIWM(Imperial War Museums)という団体が運営していますが、政府が出資している団体です

館名

入館料入館者数
大英博物館無料5,906,716人
テート・モダン無料5,656,004人
ナショナル・ギャラリー無料5,229,192人
ロンドン自然史博物館無料4,434,520人
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館無料3,789,748人
ロンドン科学博物館無料3,251,000人
ロンドン塔22.7ポンド2,843,031人
マージーサイド海事博物館無料922,503人
リバプール博物館無料737,120人
ロンドン博物館無料678,379人
ワールド・ミュージアム無料672,120人
テート・リバプール無料628,024人
国際奴隷博物館無料398,221人
ロンドン交通博物館17.5ポンド382,405人
ウォーカー美術館無料295,916人
チャーチル・ウォー・ルーム21ポンド
参考:マダム・タッソー蝋人形館35ポンド
参考:ビートルズ・ストーリー16.95ポンド30万人?

フランス

大まかにいえば、大型館で15ユーロ前後(1ユーロ=130円換算で1,950円)、そのほかの一般的なミュージアムで10ユーロ前後(1ユーロ=130円換算で1,300円)といったところです。

日本的な感覚でいえば、常設展ではあるものの、企画展程度の料金といった感じかと思います。

館名

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入館料入館者数
ルーブル美術館15ユーロ7,400,000人
ポンピドゥー・センター14ユーロ3,335,509人
オルセー美術館14ユーロ3,000,000人
オランジェリー美術館9ユーロ780,000人
ピカソ美術館12.5ユーロ
ギメ東洋美術館11.5ユーロ
シテ科学産業博物館12ユーロ
シテ建築遺産博物館8ユーロ
フランス軍事博物館12ユーロ
リヨン美術館8ユーロ
ミニチュアと映画の博物館9ユーロ
リュミエール博物館7ユーロ
コンフリュアンス博物館9ユーロ

イタリア

フランスとほぼ同じぐらいの入館料相場で、10~15ユーロ程度が多いような気がします。ミラノの自然史博物館や近代美術館など地元を主な対象としているミュージアムは、入館料金が安くなるようです。

館名

入館料入館者数
トリノ自動車博物館12ユーロ
エジプト博物館15ユーロ852,095人
東洋美術館10ユーロ
映画博物館11ユーロ
マダーマ宮(市立古典美術館)10ユーロ
トリノ王宮博物館12ユーロ
イタリア統一国立博物館10ユーロ
レオナルド・ダ・ヴィンチ記念国立科学技術博物館10ユーロ
ブレラ絵画館10ユーロ
スフォルツァ城5ユーロ
ミラノ市立近代美術館5ユーロ
ミラノ自然史博物館5ユーロ
バチカン美術館17ユーロ6,066,649人
サンタンジェロ城14ユーロ1,234,443人
ナポリ国立考古学博物館12ユーロ
ローマ国立博物館10ユーロ
参考:ポンペイ遺跡15ユーロ

エジプト

外国人料金

入館料の外国人料金があり、高くなっています。1エジプト・ポンド=6.2円換算で、エジプト考古学博物館で744円、コプト博物館で600円ですから、常設展示は日本並みか若干高いかといったところでしょうか。ただ、地元の物価を考えるとかなり高いと思います。

昨年(2017年)、各地のミュージアムや史跡の入館料・入場料が大幅アップしました。例えば、エジプト考古学博物館は、75エジプト・ポンドから120エジプト・ポンドに引き上げられました。

ちなみに、ピラミッドのエリア入場料は120エジプト・ポンド、クフ王のピラミッド内部見学は300エジプト・ポンドでした。

カメラの持ち込み料

エジプト考古学博物館とスエズ博物館は、カメラの持ち込み料が必要でした。50エジプト・ポンド程度だったと思います。以前はカメラの持ち込み自体を禁止していたこともあったようです。

館名

入館料入館者数
エジプト考古学博物館120エジプト・ポンド
コプト博物館100エジプト・ポンド
スエズ博物館80エジプト・ポンド

インド

外国人料金

インドにも外国人料金があります。かなりの倍率になっているようです。その代わりというわけではないでしょうが、タージ・マハールでは、混雑時の列の並び場所が違い早く入れたり、シューズカバーや水などがついてきました。

インドを代表する博物館である、チャトラパティ・シヴァージー・マハーラージ・ヴァーストゥ博物館やインド博物館は、ともに500ルピー(1ルピー=1.6円換算で800円)ですから、エジプトと同じく常設展示は日本並みか若干高いかぐらいだと思います。物価を考えると高いのですが、まぁ、外国人料金なので。

カメラ持ち込み料

やはりカメラの持ち込み料が必要なミュージアムがありました。また、最近では減ってきている常設展示室の撮影禁止ですが、いまだに撮影禁止のミュージアムもあります。

館名

入館料入館者数
チャトラパティ・シヴァージー・マハーラージ・ヴァーストゥ博物館500ルピー
ヴィクトリア記念堂200ルピー
インド博物館500ルピー
ラビンドラ・バーラティー博物館150ルピー

シンガポール

住民は無料

シンガポール国立博物館やナショナル・ギャラリーなど多くの国立(National Heritage Board所属)ミュージアムでは、シンガポール住民は無料ですが、旅行者は有料です。外国人料金ととらえて、割り増しがあると考えることもできるのですが。

10~20シンガポール・ドルぐらいが多いと考えると、1シンガポール・ドル=82円換算で、820円から1,640円になり、日本に比べて若干高いような印象です。

シンガポール航空利用者への割引

面白いのは、シンガポール航空利用者への入館料の割引の仕組みがあることです。シンガポール国立博物館、アジア文明博物館、プラナカン博物館などNational Heritage Board所属ミュージアムで10%引き、ナショナル・ギャラリーで20%引きになります。ほかの観光系施設でも割引を受けられるところがあります。

館名入館料入館者数
シンガポール国立博物館15シンガポール・ドル
シンガポール美術館別館(SAT at 8Q)6シンガポール・ドル
プラナカン博物館13シンガポール・ドル
ナショナル・ギャラリー20シンガポール・ドル
アジア文明博物館8シンガポール・ドル
アートサイエンス・ミュージアム38シンガポール・ドル

中国

無料のところが多いのかと想像していたのですが、そうではありませんでした。有料のところも多かったです。

1パタカ=13.5円、1香港ドル=14円、1元=17円で計算すると、日本よりも少しだけ安めなような気もしますが、現地の物価感覚からすると安くはないかもしれません。特に、上海は微妙な感じがしますし、日本よりも安いとは言い切れない気がします。もしかしたら、住民に対するなんらかの割引が充実しているのかもしれません。

館名

入館料入館者数
マカオ博物館15パタカ
香港歴史博物館無料
香港科学館20香港ドル
孫中山紀念館無料
上海城市歴史発展陳列館35元
上海博物館無料
上海自然博物館30元
上海当代芸術館20元?
上海都市計画展示館30元
上海科技館60元
中華芸術宮無料
上海当代芸術博物館50元?

世界のミュージアムの入館料を比較してみると、なんとなくお国ぶりが感じられます。